昨今、企業内コミュニケーション事情が変わっている?
新型コロナウイルス感染症という未曽有の災禍によって、「対面」という最も原始的でありながらも効率的なコミュニケーションに代替する手段が模索された結果、現在の「社内コミュニケーション」は多様化が進んでいます。
例えば「WEB会議」という、どこか遠い世界でのことだった話題が急激に台頭し、今やビジネススタンダードのひとつとして定着したのは、新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行による社会・生活様式の変化に合わせて、「手段」と「常識」に大きな変化がもたらされた結果と言えます。
「今、お時間よろしいですか?」
電話に出た際、こんな言葉を耳にすることはないでしょうか。
DXという言葉が流行する前から、いつの間にか「そういうもの」として根付いていた文化の一つです。
情報通信技術・インターネットの発展普及によって、電子メール等を介した非リアルタイムでのコミュニケーションが普及した結果、電話という「手段」は「相手に対してリアルタイムでのコミュニケーションを求めるもの」「相手の時間を奪うもの」として一般的に認識されるようになったがために生まれた文化の一例と考えられます。
一方、電子メールでは相手が同僚であっても形式的なビジネスマナーや社内特有のマナーを守る傾向が強く根付いています。
冒頭に「お疲れ様です」と形骸化した文言を必ず入れるなど、丁寧にメールを書くがあまり回りくどい長文となってしまい、要点が端的に掴みづらくなり、やり取りの回数が増えてしまうなど、結果的に自分も相手も時間を無駄にしてしまい、ビジネスのスピードについて行けなくなってしまうことも。
コミュニケーションの道具が「手紙」から「電子メール」へと進化を遂げたものの、根付いている常識が手紙とメールの間で取り残されたままになっているような感覚を覚えている方も多いことでしょう。
これらの例のように、コミュニケーションの常識と手段は常に社会の在り方と歩調を合わせて「アップデート」を重ねている一方で、そのどちらもが「同時に変化」することはめったにありません。
この変化の狭間に「微妙な食い違い」が残され、直接的に問題が起きているわけではないものの、「非効率だな」「これっておかしくないか」と思いながらも言語化しきれないという「絶妙なモヤモヤ」が数多く生まれています。
ビルメンテナンス業界で社内コミュニケーションに変化は必要か?
上記のように「非効率的」な現状を認識していてもなかなか解消に至らないケースが多く存在します。
ビジネス上では、個人での選択と異なり「気軽に使うものを選べない」「一度根付いた文化を変えるのに膨大な労力が掛かる」という問題が横たわっています。
社内のコミュニケーションにまつわる悩みは言語化しづらく、直接的に数値化も困難であるため、誰しもが「なんとなく不満に感じている状態」になってしまい、検討の俎上にも上がりにくい部分。
そこで今回の特集では、まずは主要なコミュニケーション手段の特徴と、ビルメンテナンス業界特有の課題や周辺環境の変化について整理します。
現状認識
コミュニケーションの特徴とビルメンテナンス業界を取り巻く環境・課題
1)主要なコミュニケーション手段の特徴
現在、ビジネスで利用されるコミュニケーション手段は、大きく分けて「同期型」「非同期型」の2種類となります。
- 同期型(リアルタイム型)
リアルタイムでのコミュニケーション。
対面や電話、WEB会議など「同時に双方向でのコミュニケーションを図る」もの。
相手の反応を即時確認しながら、スムーズな意思疎通を図ることができる一方、会議開催時間や通話などによって一定の時間、コミュニケーションのために拘束される。
- 非同期型(蓄積型)
手紙や電子メール、チャットツールなどの「リアルタイムでのレスポンスを必ずしも必要としない」コミュニケーション。
自身の都合のよいタイミングで確認・返信などのアクションを起こすことができ、相手の状況に左右されずに連絡が取りやすい。
一方、文字でのコミュニケーションとなるため即座に反応が確認しづらい、表情や声色などの情報が得られない。
▲同期性とコミュニケーションに掛かる負担
▲それぞれのメリット・デメリット整理
2)業界特有の課題と周辺環境の変化
ビルメンテナンス業界においては、その業態からコミュニケーションに特有の課題が複数存在しています。
例えば……
・現場が無数・多岐に渡っている
・直行直帰などにより顔を合わせる機会が少ない職員が多い
・パートタイマーなど非正規雇用者が多く、全社統一での対応が難しい
・平均年齢が高く、使い慣れたものからの変化に抵抗感がある
などの課題が考えられます。
その一方で、進化していくIoT技術やAI、ロボットなどにはじまり、コロナ禍による社会の変動、そして2022年6月にはデジタル庁による「デジタル原則に照らした規制の一括見直し」によるアナログ規制の一斉見直しが発表され、今後はこれまで常駐で監視していた業務なども遠隔監視へ変わっていく可能性が出てくるなど、ビルメンテナンス業界を取り巻く環境は大きな変化を迎えようとしています。
業界の外側から迫る、避けられないデジタル化の波に適応していくにあたって、業界が注視すべきは資機材やセンサー、遠隔監視など “モノ”の側面だけでしょうか。
モノを運用するにあたって、“ヒト”に最も関わる「社内コミュニケーション」の在り方を見つめなおし、いまいちど考えるべきタイミングがやってきているのかもしれません。
次回予告
次回より、これらの現状を踏まえて「これからのビルメンテナンス業界での社内コミュニケーションは“どうありたいか”」「今のままで良いか?」など、自社での、そして業界のコミュニケーションの未来を業界人6名で討論し、実際に改善に挑戦する様子を継続してレポートします。