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特集

淘汰される社内コミュニケーション習慣#2
座談会「社内コミュニケーションのDX」

公開日:

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転載元:公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会 2023年5月25日掲載記事より転載、本記事は公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会より許諾を得て掲載しています。

DX化で訪れる「改革」の大きな流れは、個人間のコミュニケーションという「生活の足元」から既に浸透が始まっています。
個人ではすでに変化しつつある、あるいは変化を終えてスタンダードと化した「コミュニケーションの主流」は、果たしてビルメンテナンス業界にどう影響するのか?
改めていまを振り返るとともに、ビルメンテナンス事業者による「これからの社内コミュニケーション」の検討、そして挑戦を全4回にわたってレポートします。

目次

座談会「社内コミュニケーションのDX」

<司会・ファシリテーター>
橋本 通裕 全国ビルメンテナンス協会 シニアマネージャー

<ご参加者>

大野 洋平 氏

綜合建物サービス株式会社 代表取締役

森岡 健太郎 氏

互光建物管理株式会社 ホテル管理部 部長

秋山 悦朗 氏

株式会社くらしのセゾン 営業統括部 営業開発担当 エキスパート

三瓶 佑樹 氏

株式会社トーカンオリエンス 代表取締役社長

馬場 弘行 氏

株式会社ビーエムアドバンス 代表取締役

五十嵐 丈博 氏

東北ビル管財株式会社 専務取締役

デジタル庁の発足から始まり、アナログ規制の緩和(見直し)によって常駐監視業務などが緩和されるなど、社会がデジタルを前提とした仕組みへと再編成されていこうとしています。
2040年には8,000万人台まで人口の減少が進み、労働人口の減少が予期されています。人手が不足するようになれば「効率化」や「スピードアップ」が求められるようになっていき、これまでのビジネスの在り方は当然変化しなければなりません。
その他の外圧としては、AIを搭載した清掃ロボットが市場に進出し始めています。清掃ロボットは中国などからの輸入が非常に多く、本来アジアをリードする日本のビルメンテナンス業界が、むしろ中国から清掃ロボットの使い方をレクチャーされており、遅れを取っている状態です。
技術の高度化だけでなく、不足する国内労働者の代わりとなる外国人労働者の増加や、顧客ニーズの変化、またスマートビルなどの躯体そのものの進化などによって、業界を取り巻く環境が変化していくなか、それらを運用する私たち「ヒト」はどうでしょうか。
今回の座談会ではDXによるビジネスの変革期を迎えるビルメンテナンス業界において、ヒトに密接にかかわる「社内コミュニケーションのDX」をテーマに議論を交わしました。

前回の記事「#1 問題提起」はこちらから


橋本: コミュニケーションというと、雑談のような交流から指揮命令、情報共有など幅広いテーマとなりますが、今回皆さんが「コミュニケーションのDX」に関心を持たれた理由をお聞かせください。

大野:弊社は早いうちに立ち上げていたカンボジアの現地法人をはじめ、外国人労働者を多く採用していますので、言葉の壁もあり、かつ高齢者の方も多く、皆が分かりやすい言葉でコミュニケーションを取るための手段としてチャットツールを検討して、数年前から導入しています。様々なツールを駆使していますが、まだまだ使う側も不慣れなこともあり、社内で統一したものは決まっていないので、何か良いアイディアはないかと思い参加を決めました。

森岡:私はホテル業務が中心なのですが、現場でのコミュニケーションにあたっては、チャットツールなど一部顧客から言われて使うこともあるものの、まだまだホワイトボードを使った引継ぎなど、原始的なコミュニケーションが多い状態です。ここで何かヒントを得て、会社に持ち帰れたら良いなと考えています。

秋山:私の問題意識は、コミュニケーションが希薄になり、真実が伝えられていないということです。重大な欠陥や伝えなければならないことを迅速に報告できていない、人を介しての報告となりニュアンスが伝わらないなど、本当に伝えなければならないことが伝えられていないと感じています。座談会の皆様との情報共有・交流を通じて、コミュニケーションのヒントを得たいと思っています。

三瓶:弊社はビルメンテナンス以外にも工事などの業務を行っていますが、現場によっては50人100人という単位の現場もある中で、コミュニケーションというのが一つの大きな課題になっています。一部ビジネスチャットを取り入れたりなどしていますが、会社としての方向性をもって、どのようなコミュニケーションをしていこうか、方向性が打ち出せれば良いと考えています。

馬場:会社を立ち上げて23年目となりますが、アナログ的なコミュニケーションでずっと来ていました。デジタル化、DXという言葉が出てきていて、コミュニケーションの大切さは理解しているつもりですが、「デジタルに頼りすぎると社内がおかしくなってしまう」と言われたり、実際にそうなってしまった会社を見てきてきました。過去に形だけシステムを導入して失敗した経験もあります。社内では一部チャットツールや出退勤管理システムを使っていますが、会社として基幹システムを取り入れようという動きがちょうどあり、勉強のため参加させていただきました。

五十嵐:秋田で、清掃→設備→解体→廃棄物処理と、いわゆる静脈産業を川下から川上へ事業展開してきました。1か月の半分ほどは東京にいることから、コミュニケーションをどう取っていくのかが喫緊の課題です。WEB会議などで複数のツールを使って混乱してしまうこともあるので、グループ企業間で統合的に利用できる仕組みが作れると良いなと思い、今回の座談会に参加しました。

モヤモヤする現状のコミュニケーションは?

橋本:日頃からのコミュニケーションの中で、疑問に感じているようなことや、ちょっとした不都合は意外と多いんじゃないかと思います。
例えば、業務報告を提出する際にFAXをして、「今FAXしました」と電話をして、それに対してメールで返信が返ってきて、更にそのメール返信の説明のために電話が掛かってくるとか。こういったやりとりは全国協会でも時折見かけます。

一同:あぁ〜

橋本:他にも、温かい気持ちで労うようなメールを送ったつもりだったのに、文面が硬いのか、相手がむしろ恐縮してしまうようなメールになっていたことを後日知る、ですとか。
差し迫った問題、というわけではありませんが、こうした微妙なモヤモヤ感が積み上がっていくと、意外とコミュニケーションに影響してくるのではないかと考えています。

大野:まだFAXなんかは必要なところだけ使ってますね。ビルメン協会さんとのやり取りとか。

一同:(笑)

五十嵐:FAXはデジタルデータを確認して、必要なものだけを印刷する運用にしていますが、東北だからなのか押印して返送を求められるものが多く、結局、かなりの分量を印刷せざるを得ません。私は弁護士でもあるのですが、裁判所への書類提出はいまだにFAXか郵送がほとんどです。

大野:一人親方で仕事をされている業者さんなどは携帯一本でやっていてメールも見ないので、家に送っておいて欲しい、と言われることもありますね。つい最近も、報告書の写真を全て現像して送ってこられた親方さんがいました。

橋本:それは大変な手間が掛かっていますね

森岡:ホテルでは、リネンの発注などで割と館内の連絡にFAXが使われています。

大野:意外とそっちの方が「早い」と言うことはありますよね。決まった書式に必要数だけ書き込んで送るなどであれば、パソコンを立ち上げてメールを打って、よりも早いなんてことはあると思います。

五十嵐:少しFAXから話が変わりますが、紙をPDFにしたものが、毎日私のところに20枚30枚と送られてきて確認して承認していくのですが、この決裁書類を毎日20枚30枚とスキャンして送る作業をしている社員がいるわけで、結構な時間をそこに割いているんだなと感じています。

橋本:お話を伺っていると「デジタルが良いか・悪いか」という二元論ではなく、アナログとデジタルを融合した「丁度いい塩梅」というものが目指すべきところとしてあるのかなと思います。その「丁度いい塩梅」がこれからどうなっていくのかなと。
これから会社の中でのコミュニケーションをどういう方向へ持っていきたいのか、その理想の前に横たわる課題はありますか?

それぞれのコミュニケーション課題

森岡:ホテルの話になりますが、外国人労働者のことでふたつ課題があります。
何か注意したいときに、一定の日本語は理解してもらえますが、『ニュアンスが伝わらない』ことがあります。書いておいても読んでくれず、何度も何度も注意することになってしまう。またその時に全員が出勤しているわけではないので、通達に時間差が出てしまいます。
もう一つは、ルールや指示が非常に複雑なのに、電話で全てやり取りしているところです。そのホテルではおもてなしのために、宿泊客ごとのこだわりに合わせて「何を、どこに、どう置く」といった詳細な指示があるのですが、それをすべて紙の指示書を元に電話で指示されている現場があります。
最初はメールで伝えようとしましたが、中々難しく、結局紙と電話に落ち着いている状態です。複雑でかつ伝えるのに時間がかかることなので、「正しく・速く伝える」ために何ができるのだろうと。

五十嵐:それはホテル側とそういう契約になっているのでしょうか?

森岡:なっています。

五十嵐:それは大変ですね。弊社ではある設備管理の現場で、CO2や、使用電気量など、仕様にないコンサル窓口まで頼まれてしまって、現場が大変な思いをしていることがありました。そしてその事を営業と顧客でちゃんとやりとりをしているのかなど、現場が全く知らないままで、コミュニケーション不足も課題として浮き彫りになりました。森岡さんのところではそういう感じではないのですね。

森岡:仕様に入ってしまっていると言うか、そこも含め一室を仕上げることが仕事になってしまっているので「できない」とは言えない状態ですね。
実は「この宿泊者が前回泊まったときに、こう言うことがあったのでこういう風にしてください」といったホテルからの指示が作業後に責任者に届くこともあり、現場が混乱してしまうことがありました。そうでなくても、弊社の責任者を中継して現場へと情報が回っていく構造なので、どうしても伝達ミスが発生する可能性があります。フロアの人間と、責任者と、ホテル側が一箇所で情報を見れてやりとりできる情報共有のツールとして、チャットツールの導入ができればいいなとは思っているのですが、顧客を説得しきれていない状態です。

秋山:コミュニケーションから少し話が外れてしまいますが、ファミリーレストランで配膳ロボットを導入した事例があります。
これは配膳ロボットを導入したところ、お客様からの評判も良く、配膳に掛かる歩数が相当削減できたというもので、機械にできることを機械に任せることで、次のピークに向けた準備をすることができるようになったそうです。
これは人件費自体は改善されていませんが、注力しなければならないところにきちんと注力できるようになったことで、従業員の満足度も向上するような改善になったとのことでした。
こうした事例を参考にしながら、ではビルメンテナンス業の分野で「便利なもの」を導入していくにはどうしたらよいか、を考え始めているところです。

馬場:情報共有システムとしてお客様側がオンライン会議・チャットツールでやり取りして確認できる場を用意してくれた現場もあります。

秋山:情報共有という面からですが、普段スプレッドシートなど、オンライン(クラウド)のツールを使っています。修正があるとメールで通知が来たりと便利ですが、「どこを修正したのか」が分からなくなったりします。最後に誰が修正したかだけはわかるので、結局「どこを追記したの?」と電話で確認する羽目になっていて、これってアナログだなと感じることもあります。
とはいえ、先ほど皆さんが仰ったように、顧客と私たちのような管理者、そして現場が、一つのオンラインで結ばれていた方がいいのかな、と思います。 ただ、これにも課題があって、顧客側の誰しもが見れて書き込めてしまうと錯綜してしまったり、仕様を把握していない方も書き込めてしまうと過度な要求がきて、仕様が崩されてしまう恐れもあるので、権限などの交通整理が必要となってくると思います。

橋本:顧客とのコミュニケーションを考えると、顧客に自社のやり方を強いることはできませんが、顧客から「これで連絡を取りたい」などの求めがあった際に適応できるようにしておきたいですね。

”コミュニケーション統制”の難しさ

三瓶:弊社では、現場で働いていただいている方が1000人などいる中で、例えば海外から働きに来ている方は使い慣れているこのチャットツールを使い、別のグループではまた違ったチャットツールを使う、など、それぞれが使い慣れたツールを使っているのですが、会社として「統一できない」という問題が出ています。
一度ツールを統一して現場に使ってもらったことはあるのですが、例えば、上長がいるグループで、グループ長を飛ばして上長へと上申してしまう人が出てきてしまったり、コミュニケーションの制限ができず、錯綜してしまうことがあって足踏みをしている状態です。パートタイマーの方から私に直接連絡が来るケースなども実際ありましたし(笑)。
本来は皆がコミュニケーションできることが仕事のスピードアップに繋がっていくと思うので、ゆくゆくは見据えていかなければならないとは思うのですが、現段階ではマネージメント側だけで使っている状態です。

五十嵐:現場から常に直接連絡が来てしまうことで困る、ということは仰る通りあると思うのですが、一方でそれが重要な一次情報で改善に繋がることもあって。
私が一番「怖いな」と思っているのが、一次情報へのアクセスが難しくなってしまうところかなと。人手不足で本来そういった情報を汲み上げていくリーダーが現場に入らざるを得なくなってしまい、ちゃんと現場の話を聞いて回る余力がなくなっています。そこからコミュニケーション不足により不満の連鎖が起こってしまっています。
直接意見を上げられるところは残しつつも、基本的にはここでコミュニケーションを取ってね、というような上手い使い分けができると、ある程度解消されるのではないかと思います。

大野:文化の異なる海外の方、デジタルが苦手な方などいるなかでは、例えば階層別のグループを作っていくとか、工夫をして交通整理をした上で仕組みを作っていかないといけないと思います。
とはいえ、グループの中で解決してしまって情報が他へと伝達されていかないといった事態も見越した仕組み、情報統制のあり方も考えていかないといけないかなと思っています。
また、例えば災害が起きた際の連絡で、明日は大雪なので気をつけてください、のような、一方通行で良い情報伝達も、コミュニケーションの一手段として今後作っていきたいと考えています。

心理的障壁

橋本:その一方で、現在時点では、デジタルは嫌だ、私物を使うのは嫌だ、という方もいらっしゃいますね。

大野:アプリを入れるのは嫌だといった意見もありますし、個人の携帯でいろんな情報にアクセスしてもらうというのは、管理にまつわる問題も多いかと思います。
会社支給のものであれば、法的な面からもセキュリティがしっかり掛けられますが、私物の携帯で何かあった時に「中身見せて」とも言えないですよね。

馬場:携帯そのものを持っていない方も、数名ですがいらっしゃいました。

大野:逆に持っていても「持っていない」と言い切る方もいらっしゃいますよね。

馬場:職場に教えたくないんでしょうね(笑)

一同:(笑)

五十嵐:「えいや」と一気に電子化してしまうと辞められてしまうのではないかという恐れもあります。給与明細を電子化した際、1割ぐらいは「絶対嫌だ」という方がいました。

馬場:配膳ロボットの事例のように、直接的なコスト削減以外の導入効果を考える必要もありますね。経理ソフトでもそうだったのですが、5年で1人分削減になるかどうかというところでしたが、経営側が欲しい情報がすぐ出せると。そういうところで間接的にもコスト削減が出来ているのだと思いますが、コミュニケーションに関しても、その先を見るしかないというか。

大野:スマホの普及率はだいぶ進んでいますので、スマホ、チャットツールを使ったコミュニケーション自体は止まらないと思います。だいぶ環境として進めやすくなってきていると思いますし、抵抗感を持つ方も、この先の5年ぐらいでさらに減っていくんじゃないかと思います。
大きな課題としては、どこまでのコミュニケーションが必要なのか、という点ですね。現場で一生懸命仕事をしていただいている人の一人一人と「どこまでの」コミュニケーションを取らなければならないのか、どのレベルまで情報を共有しなければならないのかによって、判断基準が大きく変わってくるのではないかなと思います。


今回の座談会を受けて、参加者の抱える課題が出揃いました。
そこで、今回、NTTビジネスソリューションズのビジネスチャット「elgana」を参加者の企業内でそれぞれ無料でモニタリングしていただきます。
一つのビジネスチャットを、それぞれの立場からレビューいただくことで、「企業規模」「受託業務」別で、お互いに何か見えてくるものがあるかと思います。

次回予告

次回座談会では、今回挙がったような課題をどのように乗り越えるのか、何が導入の上で大きな課題になったのか、検討状況や実際にモニタリングを経て得られた知見や課題感について、情報共有して頂きます。

elgana編集部
elganaのお役立ちコラム編集部です。
ビジネスコミュニケーションや業務効率化について発信していきます。

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