安否確認システムを導入する必要性
インターネットやスマートフォンが普及し、さまざまな連絡ツールがあるなかで、なぜ安否確認システムを導入する必要性があるのでしょうか。
そもそも安否確認システムとは
安否確認システムとは、災害や緊急事態発生時に、従業員や関係者の安否を迅速に確認するためのシステムです。電話やメールでの個別連絡とは異なり、システムを通じて一斉に安否確認の連絡を行い、回答を自動で集計できます。
また、掲示板機能などを活用することで、従業員同士の情報共有やコミュニケーションの促進も可能です。安否確認システムは、企業の危機管理において重要な役割を果たしているといえるでしょう。
BCP策定の一環として最重要
企業の事業継続計画(BCP)において、従業員の安全確保は最優先事項です。労働契約法第5条に基づく安全配慮義務により、企業には従業員の安全を守る対策が求められています。
安否確認システムを導入することで、災害や緊急事態発生時に従業員の状況把握や事後対応を迅速にできます。また、二次災害の防止や事業復旧に向けた人員配置などにも役立つため、BCP策定において最も重要な要素といえるでしょう。
安否確認システムの導入率は?
東京商工会議所が2024年に行った調査では、34.4%の企業が「有料の安否確認システム」を導入していると回答しており、前年よりも増加しています。しかし、現状ではメールやSNSの利用率が52.5%を占めています。メールやSNSは災害や緊急事態発生時に正常に機能しない可能性があるため、BCP対策としては改善の余地があるでしょう。
出典:「会員企業の防災対策に関するアンケート2024年調査結果」|東京商工会議所
なお、2024年に株式会社帝国データバンクが実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」では、重視する対策として「従業員の安否確認手段の整備」が68.9%と高い割合を示しています。ただし、企業規模別で見ると大企業が80.3%に対し、中小企業は65.7%となっています。中小企業ではBCPに対する意識がまだ低いため、早急に対策を講じる必要があるでしょう。
出典:「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」|帝国データバンク
安否確認システムを導入するメリット
実際に安否確認システムを導入した場合、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。
自動で安否確認の状況を収集できる
安否確認システムを導入すると従業員からの回答を自動で集計できるため、電話やメールによる個別確認と比べて、担当者の負担を大幅に軽減できます。さらに、システム上でリアルタイムに回答状況を確認できるため、効率的に安否確認を行えるのも大きなメリットでしょう。
安否確認の自動化によって、状況把握や事後対応の抜け漏れといった人為的なミスを防ぐことにもつながります。
個人情報の漏えいを防止できる
安否確認システムはアクセス権限を設定可能で、従業員の個人情報を安全に管理できます。電話やメール、SNSによる個別確認では、誤送信などにより個人情報が漏えいするリスクが高く、企業の情報管理対策としては不十分です。
高度なセキュリティ機能が備わっている安否確認システムを利用することで、従業員のプライバシー保護とコンプライアンスの遵守にもつながります。
迅速な事後対応が可能になる
安否確認システムが導入されていれば、緊急事態発生時に従業員の安否情報を迅速かつ正確に収集できます。誰が無事なのか、誰が助けを必要としているのかなどを即座に把握でき、状況に応じた対応が可能になるでしょう。
たとえば、救助が必要な従業員への対応を優先したり、事業継続に必要な人員を確保したりするなど的確な初動対応につながります。
安否確認システムの導入手順
安否確認システムを導入する際には以下で紹介する手順を踏むことで、緊急事態発生時にその効果が最大限発揮されます。安否確認システムを導入する前に、あらかじめチェックしておきましょう。
導入する目的を明確にする
安否確認システムの導入前に、運用目的を明確にすることが重要です。自社にとって必要な機能は何なのか、緊急時にはどのような対応が求められるかを具体的に検討しましょう。
目的が曖昧なまま導入を進めると、費用対効果が低いシステムを選んでしまったり、必要な機能が不足してしまったりする可能性があります。
あわせて運用方針の設定や管理体制の構築、初動対応時のマニュアル策定など、スムーズに運用ができる環境を整備しておきましょう。これらを明確にすることで、安否確認システムの効果を最大限引き出せます。
安否確認システムを選定する
安否確認システムを選ぶ際は、必要な機能や費用感、操作性、セキュリティ機能などを比較検討し、自社にとって最適なシステムを選びましょう。従業員数や事業規模、利用シーンなどを考慮したうえで、選定することが重要です。サポート体制や導入実績なども参考に、総合的に判断しましょう。
実際に導入・運用する
安否確認システムを選定したら、実際に導入・運用を開始します。導入前にテスト運用ができる場合は、一度試用し、自社に適しているかを確認することが大切です。無料トライアルやデモを提供しているシステムであれば、実際の操作感や機能を体験できます。
運用開始後も定期的な見直しを行い、管理体制の改善を続けましょう。また、従業員へ周知や教育を徹底し、安否確認システムを有効活用できる環境を整えることが重要です。
安否確認システムの選定ポイント
安否確認システムは、「運用コスト」「操作性・機能性」「セキュリティ機能」といった3つの観点で選定しましょう。ここでは、安否確認システムの選定ポイントについて詳しく解説します。
運用コストで選ぶ
安否確認システムを選ぶ際には、初期費用および運用にかかるランニングコストも計算しましょう。複数の安否システムの利用料や保守費用、サポート費用などを含めた総コストを比較検討することが重要です。
また、従量課金型やパッケージ型など、月額の支払い体系が異なるケースがあります。従業員数やオプションによって料金が変動する場合もあるため、事前に確認しましょう。
操作性・機能性で選ぶ
安否確認システムを選ぶ際には、緊急時でも迷わず使えるシンプルな操作性と、安否状況を迅速に収集・集計できる機能性を重視しましょう。複雑な操作が必要だったり、管理画面がわかりづらかったりするシステムでは、パニックに陥りやすい災害時にうまく活用できない可能性があります。
また、安否確認だけでなく、位置情報機能やスマートフォンアプリへの連携機能などがあると、より効率的かつ詳細に状況を収集できます。
セキュリティ機能で選ぶ
安否確認システムを選ぶ際には、セキュリティ機能が充実しているかを確認しましょう。安否確認システムでは従業員の個人情報や機密情報を扱うため、情報漏えいや不正アクセスを防ぐためのセキュリティ機能が必須です。
通信の暗号化やアクセス制限などの対策が施されており、情報セキュリティマネジメント(ISMS)規格レベルで安全の確保ができているかを確認しましょう。
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安否確認システムは、安全配慮義務の遵守やBCP(事業継続計画)策定の一環として導入が推奨されています。安否確認システムを導入する際には目的を明確化し、運用コストや操作性・機能性、セキュリティ機能などを比較検討して最適なシステムを選びましょう。
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